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対談参加者
・Aさん(研究機関勤務)
・Bさん(化学メーカー勤務)
・Cさん(機器メーカーA勤務)
・Dさん(機器メーカーB勤務)
- ・自動化が必要?
- Bさん:うちは定量NMRの試験法が現場に多く入っていて、なんとかならんのかという話になっています。つまり、人が手を動かすのには一番お金がかかるので、そこを自動化したいと考えています。これは私の同僚たちも言っていることで、私も賛成です。現状の定量NMRは人間が手を動かさなきゃならない部分が多いのですが、今後AIがもっと発展すると、そこが自動化されるんじゃないかと思っています。
- Dさん:AIが役割を担うとして、AIに何をしてもらいたいですか?
- Bさん:結局のところ、生産現場で測定している人たちって、NMRに詳しくない作業員がいる場合があります。場合によっては入社するまでNMRを触ったこともない人たちがqNMRの作業をしているケースもあります。
- Cさん:作業手順の見本があって、それに従って作業するのを自動化するということですか?
- Bさん:いや、そうではなく、構造を見て、信号のアサインをして、積分区間も決めて、というのを全て自動化するということです。
- Dさん:構造を与えておけば、オートアサインしてプロトン数もカウントして、自動で定量結果を算出してくれるという機能が既にありますが、それが求めるものであるというのが今の感覚ですか?
- Bさん:そうです。ただ、ソフトウェアの自動アサインは完成度は高いと思うんですが、たまに「あれっ?」てのがあるんですよ。
- Cさん:それを判断する機能が欲しいってことですか?
- Bさん:そこまでできるといいですね。
- Aさん:それは結構ハードルが高いんじゃないかな?
- Cさん:人間がいらなくなっちゃいますね。
- Aさん:AIって、人の癖を覚えるというようなことができるようになって来ているじゃないですか。絵を描くのを覚えさせるAIというのがあるでしょ?癖を覚えて、タッチが同じような絵を判別するというのを聞いたことがあるけど、Bさんの作業をAIがトレースして、Bさんの判断を再現することができればいいですね。
- Cさん:ロボットに教えるみたいなことをやってますよね、エキスパートの人がどうやっているかを指南する感じで。エキスパートの人だったらどう判断するのかっていうデータを蓄積して、たとえばBさんと同じことができるようにしちゃう?
- Bさん:最終的には試料調製までオートでできたら素晴らしいんですが。
- Dさん:作業をコンピューターにやらせたいのか、判断をコンピューターにやらせたいのか、現時点では単純作業をコンピューターにやらせたいというのが現実的なところですよね。
- Bさん:ただ、作業の精度を可能な限り上げたいんです。
- Aさん:AIにやらせると、たまに人が見て「あれぇ?」って感じてしまうみたいな感じでしょ。決まった作業だったら行ける気がするけど、まだ5年か10年くらいはかかるかな。
- Bさん:5年後か10年後にはできるようになっている可能性はありますが…。今、自動で秤量するシステムが天秤メーカーから出ていますが、人間がやる繊細さはまったく無いんです。「ババババッ」て音がして粉が出てくるんですけど、粉が壁についちゃったりします。粉体も物によっていろんな物性があるじゃないですか。
- Aさん:そういうのは人間がやらないと無理じゃない?
- Cさん:ロボットにやらせる?ロボットが人間みたいにやれれば…
- Aさん:自動化しているのは繰り返し作業なので、同じ物質を同じようにはかるのは多分できるんじゃないかな。
- Cさん:試料と標準物質があって、試料は必ず1mg前後みたいに決まっていて、みたいなのを何かで見ました。人がやっているのを覚え込ませて、ロボットは永遠にやり続けるし、見ていて面白いよ。永遠に見ていられる感じ。
- Dさん:その辺りは理想ですけど、たぶん実現性の薄いところだとは思います。
- Aさん:費用対効果も大事ですよね。そこまでやるのにどれだけのお金がかかるのか…
- Dさん:ものすごく掛かると思いますよ。人を一人雇うよりお金が掛かるんじゃ無いですかね。
- Bさん:人を一人雇う費用でできるんだったらその予算は用意してもいいです。
- Aさん:そうするとやっぱり外部委託しちゃう方がいいんじゃないのかな。
- Bさん:結局人にやらせた方が安いのかな?考えてみれば外部委託した方が安いかもしれません。
- Dさん:実際に人が手を動かすところってのは、秤量操作と、溶媒を加えたりのサンプル調製のところですよね。
- Aさん:qNMR測定した後の処理の部分は何とかなりそうですね。
- Cさん:判断をする部分はちょっと難しいですね。
- Bさん:ソフトウェアメーカーに期待ですね。
- Dさん:ソフトなのかな?むしろ試料調製はハードなんじゃない?
- Bさん:まずはオートアサインの部分ですかね。
- ・次のステップと海外事情
- Cさん:Bさんのところはそんなに大きな化合物はやらないですよね。
- Bさん:扱っているのは比較的低分子ですね。定量NMRの利用については、うちはもう次のステージに行こうとしています。もう最初の段階は終わって、次はどうやって効率よくやるかの検討に移ってます。そうなると、自動化は必須です。
- Aさん:qNMRサミットとかでは、次のステージについての(議論が拡散したり)飽和しちゃってるよね。次のステップはそういうことなのかもしれないけど、じゃぁ「誰がやるんじゃ」と。
- Cさん:海外の某受託分析会社とかで何かやってないんですか?すごくサンプル多そうだし。
- Bさん:あそこは自分のところで何かを開発するってよりも、既に提供されているものを利用して何かやるって感じです。でも、あそこは売上の80%がqNMRなんですよ。売上8億あるんですよ。
- 3人:えぇ〜そんなに!
- Bさん:儲かっているかというと、社員が30人くらいいるのでどうかな?
- Aさん:ペイできてるってことでしょ?
- Bさん:ペイはできてますね。やはりお客さんは製薬のQC(Quarity Control)対応ですかね。
- Aさん:それをあそこが請け負ってるんだ?
- Bさん:少なくともヨーロッパではそうなんじゃないですか。最近はいろいろと頼られてる感じです。第三者機関っていっぱいありますけど、qNMRのところはあそこが引き受けているんじゃないですかね。
- Dさん:あそこは自動化している感じはあるんですか?
- Bさん:いや、たぶん自動化はしていないです。
- Cさん:数が多いからしてるのかなと思ってました。
- Bさん:少なくとも私が知っている限り、自動化していないです。
- ・フローNMR?
- Dさん:NMRの試料管ってどうなのかなぁと思うことがありまして、(試料溶液を)試料管に入れる作業って結構負担が大きいじゃないですか。だから、懐かしのフローNMRが使えないのかなと思うんですよ。NMRの試料溶液を、測定される部分の均一さを失わずにキャリーできるのであれば、両端は薄まってもいいので、僕は正直言ってそれで良いんじゃないかと思うんですよ。フローだと、リキッドハンドラーを使った自動化ができますしね。
- Aさん:そもそもそれはqNMR以外も全部そうってことでしょ?
- Dさん:qNMR以外の一般的なNMR測定では、必ずしもよくはないと思います。
- Aさん:試料がちょびっとしかなかったりしたら厳しいですか?
- Dさん:定量はそれなりに濃さが必要だと思うんですね。もちろんケースバイケースですけど、品質管理などを目的としたqNMRの場合、試料量も多く作れるから、フローNMRをもう一度やり直してもいいんじゃないかと思います。
- Cさん:LC-NMRみたいな感じの、400MHzか500MHzあたりだったらできるでしょうね。
- Aさん:今はNMRチューブを使ってるでしょ?あれをやめればいいんじゃないかな。例えば、40mmのカートリッジとかにできないのかな?それだったら96穴のスロットに並べておいて、順に送り込むのもカッコイイじゃん?今のNMRチューブでも並べて順番に導入していけるけど、形が悪くない?専用カートリッジみたいなのを作ったら、作業上はもっと簡単になるんじゃないかな。
- Dさん:NMR屋さんから言わせてもらうと、試料管て、どんなに高精度であっても、試料を入れ替えれば分解能は変わります。カートリッジであれなんであれ、試料管の交換を伴えばシム上げが必ず必要になります。
- Aさん:だったらまだフローの方がいいか。
- Dさん:フローだったら同じ溶媒系なら基本的には分解能は維持されます。微調整はやった方がいいかもしれないけど、分解能がほとんど変わらないので、機構的にはすごく楽になると思います。
- Bさん:うちはNMRチューブを販売しているので、それの売上がなくなっちゃうのはちょっと…
- Dさん:いや、なくならないですよ。あくまでqNMRの自動化に限定した話で、全自動では通常の試料管よりフローの方がやりやすいんじゃないかということで、通常のNMRとは分けて考えた方がいいです。定量NMRが専用機として100%稼働する状況であるなら、フローの方がいいんじゃないかと思います。
- Bさん:その時の課題はやはり洗浄ですかね。キャリーオーバーによるコンタミが入らないことを担保しないと、製薬業界では気にされるんじゃないかな。
- Dさん:キャリーオーバーは存在し無いことを確認すればいいですよね。試料と試料の間でブランク測定しておけば確認できるし、割と綺麗に洗えますよ。
- Aさん:コスト的には実現可能なの?
- Dさん:既存技術なのでそんなにかからないかな?
- Bさん:洗浄に重溶媒を使うとコストが気になります。
- Cさん:軽溶媒で洗うんだとしても溶媒が残っちゃうから、特にメタノールとか。
- Dさん:溶媒が微量残っていても、qNMRの場合は信号が重ならなければ気にならないはずです。標準物質とサンプルの信号があるところだけ綺麗に測れればよいわけです。
- Cさん:LC-NMRのときは、分解能調製が大変だったんだよね。
- Dさん:ここでいうフローNMRでは溶液を混ぜる必要がないです。ただ運ぶだけ。LC-NMRの最大の問題が何だったかというと、溶液のミキシングがうまくいかないことだったんです。LCのミキサーでは完全には混ざりません。
- Bさん:どこのメーカーのLCでも完全にミキシングすることはできないですね。
- Dさん:混ぜなければいいんです。LC-NMRの時もアイソクラティックならば分解能の問題はあんまり起こらなかったんですよ。定量NMRの自動化でフローがいいんじゃないかと思うのは、キャリーオーバーの問題も試料管の問題も解決できるだろうからですね。
- ・インプットデバイス
- Dさん:定量NMRの自動化に求めるものってことで、Bさんとしては「何もかも自動化」が理想なんでしょうけど、それはさすがに今すぐには難しいってことで、喫緊に何を求めるかですね。
- Bさん:試料調製のところは人間がやらなきゃいけないのが現実なので、NMRにセットして、結果を眺めるまでの間の操作は全て自動化してほしいですね。
- Dさん:どこかで確認をするという作業は必要になってくるんでしょうけど、自動化について僕が思うのは、どちらかというと人の操作で間違いを犯すようなことを防止できるのが一番良いことなんじゃないか。たとえば天秤との連携。人が数値を読んで入力するのは、絶対に間違いを起こすんです。そういうところのパラメータ入力であるとか、人間が何かを入力しなきゃいけないというのは、たぶん自動化ですごくメリットが出る部分だと思うんです。コンピューターができて人間がやるよりも絶対に間違いが少ないというのは、入力ミスですよね。
- Cさん、Bさん:私もそう思います。
- Dさん:マウスとかキーボードなんか使ってたらダメだと思います。せいぜい、ステップバイステップで「ボタンを押すだけ」くらいにすべきでしょう。
- Bさん:紙で出力して、目で見て確認するとかも、何とかならないのかと思います。いまだにこんなことやってるのかと。
- Dさん:過渡期の問題かもしれないけど、人間が確認しないと安心できないんでしょうね。
- Aさん:日本の職人気質的な気質があるから、そこがちょっと障害になるよね。
- Dさん:1万回、2万回とやって、1度も問題が起こらなかったら、1年間の毎日の稼働でただの1度も問題が起こらなかったら、そろそろやめてもいいんじゃない?ってことにならないですかね?もういいかな?って
- Bさん:紙で見ている人たちは、間違いを見つけることに生きがいを感じているので…
- Dさん:1ヶ月とか2ヶ月に1回とかでも、間違いがあるんだったら、それは必要ですよ。
- Bさん:オートでやって間違いがなくなるなら、1年もやってれば「もういいわ」って感じになるかもしれません。
- Dさん:やっぱりキーボードとはおさらばする必要がありそうですね。
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